個人開発で何を作るか決める|題材は困りごとと得意から選ぶ
このページの結論
題材は、思いつくのを待つものではなく、自分の日常から選ぶものです。不便を解決したいなら自分の困りごとから、伝えたいことがあるなら自分の詳しいことから。「誰の、何が、どうなるか」を1行に書けたら、企画はできています。
何を作ってもいい。だから、決めにくい
個人開発には、課題を出してくれる学校も、仕様を渡してくれる会社もありません。 何を作ってもよい代わりに、何を作るかは自分で決めることになります。 以前は「書き方が分からない」が最初の壁でしたが、AIがコードを書くようになってその壁は低くなり、 いまは「何を作るか決められない」が、最初の壁として残っています。 この経緯は個人開発とはで説明しています。
つまり、ここで迷うのはつまずきではなく、いま多くの人が最初に立つ場所です。 ここを通る手順を持っておくと、止まらずに済みます。 手順は、題材を1つ選ぶ、1行に書く、機能を1つに絞る、の3つです。 順番に進めれば作り始められる状態になります。ここに何日もかける工程ではありません。
ステップ1: 題材は、自分の日常から選ぶ
探しに行く先は、世の中のすき間ではなく、自分の毎日です。 出どころは2種類あり、どちらから選んでも成立します。
| 困りごとから選ぶ | 詳しいことから選ぶ | |
|---|---|---|
| 出どころ | 自分の毎日の中の、不便や面倒 | 本業や趣味で身についた知識・経験 |
| 見つけ方 | 毎回手でやっている作業。毎回検索し直していること。使っている道具の「あと1つこうだったら」 | 人からよく聞かれること。教えると喜ばれること。1年前の自分が知りたかったこと |
| 向かいやすい形 | 便利ツール・アプリ・Webサービス | ブログ・解説記事・動画 |
| 作るときの気持ち | これを解決したい | これを伝えたい |
「困りごとから選ぶ」は、不便を解決する形に向かいます。 日に何度も繰り返している面倒ほど、作ったあとに自分が使い続けられます。 「詳しいことから選ぶ」は、伝える形に向かいます。 特別な専門知識である必要はありません。同じ道をこれから通る人にとっては、 半年前に自分がつまずいた記録がそのまま読みたいものになります。
たとえば、こんな題材です。
- 毎週の報告のたびに、勤務時間の集計を手で計算している人が作る、表を貼り付けると集計される道具
- 旅行のたびに持ち物を考え直している人が作る、自分用の持ち物チェックリスト
- 経理の仕事で新しく入った人からよく質問される人が書く、会計ソフトの初期設定の解説記事
- 趣味のパン作りで配合の計算をいつも調べ直している人が書く、分量の早見表つきの記事
2つに共通するのは、外に「当たりそうなアイデア」を探しに行かないことです。 自分の日常から選んだ題材は、困りごとの中身も、伝える内容も、自分がいちばんよく知っています。 作っている途中で判断に迷って止まることが減ります。 他人が欲しがるかどうかを、この段階で考える必要はありません。先に考えると決まらなくなります。
ステップ2: 「誰の、何が、どうなるか」を1行に書く
題材を選んだら、それを1行に書きます。どちらの出どころでも、書式は同じです。
- 解決する形の例 「自分が、毎週の勤務時間の集計を、表を貼り付けるだけで済ませられる」
- 伝える形の例 「経理を初めて任された人が、会計ソフトの初期設定でつまずかずに済む」
この1行が書けると、あとの判断が芋づる式に決まります。 解決する形なら、保存しておくものはあるか、ログインは要るか。 伝える形なら、文章で書くのか動画で見せるのか、どこに置くのか。 どちらも、次に読む「形選び」と「工程」のページで、そのまま入力になります。
逆に、1行に書けないうちは、まだ題材が絞れていません。 「〜も」「〜と」で文が伸びるときは、いちばん回数の多い困りごとか、 いちばんよく聞かれることだけを残してください。
ステップ3: 最初は機能を1つに絞る
作り始めると、足したいものが次々に見えてきます。 ここで判断の基準になるのが、ステップ2の1行です。 その1行が果たせるなら、最初の版はそれで足りています。
解決する形なら、機能を1つに絞ります。伝える形なら、最初の1本の範囲を1つに絞ります。 知っていることを全部入れた1本より、1つのつまずきだけを扱った1本の方が、すばやく公開までいきつきます。 機能も記事も、出したあとに足すことができます。 まずは公開までの期間を短くすることで、途中挫折を防ぐことにつながります。 なにより自分のプロダクトが動くことが、個人開発のモチベーション維持につながります。 本業と並行して進める時間配分は副業としての個人開発で扱っています。
ハルがこのアプリを実際に作って公開するまでは、連載ハルの個人開発で追えます。
最初の1つに向かない題材も、知られている
題材の選び方に決まりはありませんが、個人開発の世界では 「最初の1つには向かない」とよく言われる型があります。 候補が複数あって迷ったときは、外す側の判断に使ってください。
- 立場の違う利用者を、2種類集める形。 たとえば「教えたい人と学びたい人をつなぐサービス」は、 両方の利用者を同時に集めないと成立しません。1人での運営には荷が重い構造です。
- 投稿が集まって初めて価値が出る形。 SNS・掲示板・レビューサイトは、開いた直後は中身が空です。 人が来ないから投稿されず、投稿がないから人が来ない、という循環に入りやすい構造です。
裏返すと、自分ひとりが使っても役に立つ道具や、1本目からそのまま読める記事は、 公開したその日から成立します。自分の日常から選んだ題材は、自然とこちら側になります。
題材が決まったら、次は「何の形で作るか」です。 形ごとの費用と審査の違いは個人開発で何が作れるのかに並べています。
よくある質問
考えた題材が、既にあるサービスや記事とかぶっています。やめるべきですか?
かまいません。既にあるものと重なっていても、自分の困りごとが片づくなら、あるいは自分の経験から書けることがあるなら、題材として成立します。売ることを考える段階になったら既存のものとの違いが要りますが、それは最初の1つを出したあとの話です。
プログラミングの練習用として、TODOリストのような定番アプリがよく紹介されています。そこから始めるべきですか?
書き方そのものを学びたいなら、定番アプリは練習台になります。ただ、作ったあとに自分が使わないものは、公開や集客まで進む理由を持ちにくく、途中で止まりがちです。企画から公開までを一周する経験が目的なら、小さくても自分が使うもの・自分の経験から書けるものをすすめます。
作りたいものが大きすぎる気がします。
最初の版で残す機能や範囲を1つに絞ってください。残りは出したあとに足せます。大きいまま作り始めると、公開に届く前に止まりやすくなります。
特別に詳しいことなんてありません。それでも伝える形は選べますか?
専門家の水準は要りません。自分が最近つまずいて、調べて、抜け出したこと。それは、いま同じ場所でつまずいている人が探している情報です。「1年前の自分が読みたかったか」を基準にしてみてください。
需要を調べてから作るべきですか?
最初の1つが、自分の使うもの・自分の経験から書けるものなら、需要の調査は要りません。売る段階になったら、同じ困りごとを持つ人がどこにいるかを考えます。その方法は集客のページで扱っています。
題材の候補は、どこかにメモしておくべきですか?
1行で書き留めておく場所を決めておくと、次の題材選びが短くなります。不便に「惜しい」と感じた瞬間や、人にうまく説明できた瞬間が、いちばん具体的に書ける瞬間です。
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